葬儀について
2019.11.06 浄土真宗のお葬式について
11月28日は浄土真宗の開祖・親鸞聖人のご命日です。
親鸞聖人にちなんで、今回は浄土真宗とそのお葬式についてご説明いたします。
そもそも浄土真宗とはどういう宗派なのか?
浄土真宗の御本尊・阿弥陀仏は仏の悟りを得る前に四十八つの誓いを立てました。この誓いのひとつに、「すべての人が心から信じて、私の国に生まれたいと願って、わずか十回でも念仏して、それでも私の国に生まれることができないのであれば、私は決して悟りを開きません」というものがあります。
この誓いを浄土真宗では《本願》といいますが、この《本願》のはたらきによって、浄土真宗の門徒さんは亡くなられたあとかならず阿弥陀仏の国・「西方極楽浄土(さいほうごくらくじょうど)」に迎えられ、仏になれると考えられています。
仏様になるには煩悩を1つ残らずなくさなければなりませんが、どんなに善い人でも、またどんなに悪い人でも、人間である以上は簡単に煩悩をなくすことはできません。ましてや、親鸞聖人の生きた鎌倉時代は「末法」の時代といわれていました。
お釈迦様が亡くなられてから時が経てば、その教えが正しく伝わらなくなり、悟りを開ける者はいなくなると考えられていたのですが、「末法」はまさに教えも伝わらず、悟りを得られる人もいないとされていた時代です。まさに自分の力で悟りを開くことのできない時代に、自力では救われることのできない人々も、阿弥陀仏のはたらき=他力によれば必ず救われることができる、というのが浄土真宗の考え方です。
昨今「他力本願」は「人まかせ」という意味で使われることの多い言葉ですが、これはもともと浄土真宗の言葉で、「阿弥陀如来の本願のはたらき」というような意味です。中世インドの学者たちは神様や仏様が人々を救ってくれる時に人々はどうしていればよいのかを「猿の道」と「猫の道」と例えたそうです。子猿も子猫も、移動するときはお母さんが運んでくれます。けれど、母猿が子猿を運ぶとき、子猿は母猿のおなかにしっかりとしがみついて振り落とされないように努めなければなりません。一方、母猫が子猫を運ぶとき、母猫は子猫の首のところをくわえて運びますので、子猫は母猫にすべてを預けているだけで移動することができます。
従来の宗派も、浄土真宗も、仏様の力によって悟りを得るという点では同じですが、これまでの宗派は修行をするなど自分の努力やないと悟ることができない「猿の道」であったのに対して、浄土真宗は阿弥陀仏にすべてをおまかせすれば悟りを得られる「猫の道」です。「他力本願」とは、阿弥陀仏の本願のはたらきにすべてをおまかせするという意味だったのです。
浄土真宗のお葬式
さて、浄土真宗の基本的な考え方をご紹介したところで、浄土真宗のお葬式について詳しくお話させていただきます。浄土真宗のお葬式は「御仏前」だったり、旅支度をしなかったり、清め塩を用いなかったり……と他の宗派とは異なる作法が数多くありますが、これらはすべて浄土真宗の考え方に由来するものです。
浄土真宗以外の宗派は、ごく簡単に言えば亡くなられた方に迷わずまっすぐ成仏してもらうためにお葬式をします。ですが、浄土真宗は亡くなられた時点で故人は仏様となっているわけですので、成仏を祈る必要がありません。
亡くなられた方をご縁として、私たちが念仏の教えに出会う儀式であり、阿弥陀仏に「極楽往生させていただいてありがとうございました」と伝える場であると言われています。
お経というと、「ナンマンダブ」「ナンマイダー」といったものをなんとなくイメージされる方は少なくないと思いますが、これらは「南無阿弥陀仏(なむあみだぶつ)」と阿弥陀仏のお名前をお称えしているもの、お念仏です。南無は「自分の心身のすべてを投げ出して敬い信じ、順います」という意味ですから、「南無阿弥陀仏」は「阿弥陀仏にすべてをお任せします」といったところでしょうか。また、阿弥陀仏のはたらきによって故人は西方極楽浄土に導かれるので、お坊さんが直接故人を導くこともありません。
親鸞聖人は「私が死んだときにはお葬式もお墓もいりません。私が死んだら賀茂川に捨てて魚の餌にしてください」とおっしゃったそうです。阿弥陀仏を心から信じて、浄土に生まれることを疑わなかった親鸞聖人の信心が垣間見えるような言葉ですが、浄土真宗のお葬式にもそのエッセンスはしっかりと受け継がれています。
「御霊前」?「御仏前」?
最初にご説明したとおり、浄土真宗の門徒さんは、亡くなられるとともに阿弥陀仏がお迎えに来て、阿弥陀仏の世界である西方極楽浄土に生まれ、すでに仏様となっておられます。お通夜・お葬式の際、ほとんどの宗派ではご香典を入れる熨斗袋の表書きには「御霊前」ですが、浄土真宗では「御仏前」と書くのがマナーとされているのは、そういった理由があるのです。
なぜ旅支度をしないの?
また、ご納棺の時に行う旅支度は「冥土の旅」に出るための支度です。人は亡くなられてらから次の生を得るまでの四十九日間、旅をすると言われております。しかしながら、浄土真宗の門徒さんは四十九日を待たずともすぐに西方極楽浄土に生まれますので、旅をいたしません。それゆえに、旅支度も必要がないのです。
清め塩はいらないの?
お清めの塩は必要ありません。浄土真宗は死を「穢れ」として受け止めないためです。神式のお葬式についてのコラムで簡単に「穢れ」についてご説明しましたが、仏教に本来「穢れ」という考えはないそうです。浄土真宗では、生前に親しんだ人たちを亡くなった途端に「穢れたもの」として扱うことをしないそうです。身近な方の死を通して、「死」という事実を受け止め、深く考えて向き合っていくことを大切にしています。したがって、「穢れ」という考え方がないのでお清めの必要もありません。
浄土真宗の宗旨とそのお葬式について簡単にお話させていただきましたが、お分かりいただけましたでしょうか。この他にも、浄土真宗だけ異なる作法が数多くございます。しかしながら、根本的なところは同じでもお寺さんがその土地の慣習に合わせてくださっている場合もあり、一概にすべてのお寺さんがこのようにするといったマニュアルはございません。あんしん葬儀社はそういった宇都宮市をはじめとする地域の皆様によりそい、その地域ごとのお寺さんとのお付き合いを大切にしております。地元のお葬式のことで、お困りのことがございましたらまずはお気軽にお問い合わせくださいませ。
ここまでお読みいただきまして、ありがとうございました。
代表取締役
荒井 貴大
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